7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
ブザーが鳴って
バスが発車する。
通り過ぎる街の灯り
涙でにじむ虹色のスパンコール
いつか見た懐かしい店
いつか聴いた懐かしいメロディ
いつか嗅いだ懐かしい匂い
どれもこれも過ぎ去った
遠い遠い思い出ばかり
大井ビルの角を左に曲がり
西村のビルを横目に
バスは私を揺さぶりながら
道玄坂を登って行く
映画館
井門インテリアビル
あれは、指輪を買った宝石店…
とっくの昔に失くしてしまったあの指輪。
「次は、大坂上
お降りの方は
バスが止まってからお立ちください」
バスは止まると
乗り口が開いた。
さあっと、冷たい空気が流れ込む。
新鮮な夜の空気と共に
トットットッ
音を立てて
若い男の子が乗ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!