If...もしも 贖罪①

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If...もしも 贖罪①

「滝沢さん、今から外に出られませんか?ちょっと話が…」 スマホから聞こえる言いづらそうな林さんの声 「あれ?遅いランチしながら夕暮れの街、撮影するんじゃなかったのか?」 滝沢が問うと 「そうなんだが…ちょっと厄介な話を耳にしちゃって」 時計を見ると16時半。 今日、瑞樹はホテルの花の活け替えの日…帰るのは遅い 芽生の放課後スクールのお迎えに間に合わなくなる。 「悪い、このまま電話じゃダメなのか?」林さんに聞くと 「明日!明日の日中、都合付けられないか?」 食い下がるか…顔を見て話がしたいらしいな… 「明日の午前中なら出られるようにするが…」 「解った。時間は追って連絡する」 ガチャリ…慌てた感じで電話が切れた。 厄介ってなんだ? 林さんカメラマンだからヤバイ写真でも撮っちゃったか? あ…会社の人間の不倫写真か? それとも何か壊したか? …ありがちだな(笑)  そんな呑気な事を考えながら芽生のお迎えに行き夕飯を作る。 今日は、下ごしらえをしておいたハンバーグ。 芽生のハンバーグを焼き終わる頃、瑞樹が帰って来た。 「お兄ちゃん!おかえりなさい」 「芽生くん、ただいま。学校は、楽しかった?」 「うん!とっても楽しかったよ!宿題も終わっているよ」 「さすが!芽生くん!!」 二人がハイタッチしたclap音が響き 玄関から二人の楽しげな声と共ににこにこしながら部屋に入って来た。 「宗吾さん。ただいま戻りました」 俺の顔を見て微笑む瑞樹は、野山に咲く百合の様に見える。 「おかえり。瑞樹の分は、これからだから風呂に行って来い」 「はい、そうさせていただきます」 風呂に送り出してから明日の林さんとの約束を思い出した。 2022年1月11日
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