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普段割とおとなしいあいつが、やたら饒舌に喋っていた「よく分からん生物」とやらが気になり、例のコンビニにやって来た。
野菜コーナーは壁際の方なので、扉の近くからだとお菓子やカップ麺のある棚に遮られて見えない。
あいつは、その「よく分からん生物」には赤ちゃんがいると言っていた。その事は俺も素直にお祝いしてやろうと思う。あいつのようにものをあげようとは思わない。言葉を捧げる。おめでとう、よく分からん生物。
お菓子やカップ麺の棚を通り過ぎる。目的の場所まではあと少しだ。
そういえば、「よく分からん生物」とは何なんだ。
野菜コーナーの目の前についた。少しドキドキしながら覗き込むと………
そこには、何もいなかった。
コンビニに、人間以外の生物がいるわけない。
それに、コンビニは如何せん狭すぎる。
心の準備全くなしで何もいない野菜コーナーを覗き込んだ俺。
厳密に言うと、野菜しかない野菜コーナーを覗き込んだ俺。
もう一度しっかりと見るが、やはり何もおらず。
俺は静かにその場を立ち去った。
十年前の話だ。
あいつとは今もたまに会うが、あのときのことは何となく怖くて、詳しく聞けていない。
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