私を隠して

エピローグ

私を隠して。
あなたならできるから。
その大きな体なら私を隠せる。
その声なら私をかき消せる。
その美しさなら私は及ばない。

私は何も望まない。
だけど……もしひとつ望んでもいいのなら『自由』が欲しい。
富も美貌もいらない。恵まれなくたって構わない。『自由』であればそれでいい。
綺麗な服なんていらない。高い服も捨ててやる。燃やしてやる。高級な食事なんてなくていい。食べられるのならそれでいい。

あなたは変わらなくていい。
私が勝手に変わるから。
あなたは私を愛さなくていい。
こんな人間はさっさと捨てて、素敵な人を見つけなさい。優しい恋をしなさい。

あなたはあなたのままでいい。

ねぇ、お願い。私を隠して。
そして、どうか……そのまま、忘れてね。
誰の悲しみにもなりたくない。後悔もしたくない。今の私なら、誰の中にも残らず消えられる。だから、今行くの。

でも……ごめんなさい。『誰の』は違うかも知れない。少なくとも『あなた』には私が時より映るでしょう。

だから……最後に私の『力』で私を消すから心配しないで……