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つまり、美談どころか情けない失敗談だった。――という具合に少し勘違いもあったが、それより何より、貴史のことを記憶にとどめてくれていたことが嬉しかった。
そしてその年の12月、悠介や彼女の友達と連れ立って仙台光のページェントに出かけると、それをきっかけに、二人で会うようになった。
翌年、三年生になった貴史は、大学に進学する準備に時間を割くことが多くなったが、美沙紀とはその後も時間の許す限り顔を合わせた。
ある日、二人が訪れた公園に、色とりどりの花が咲いていて、その周辺に小さな子供を遊ばせる母親や年老いた夫婦の姿があった。
それは、二人がタクシーに一緒に乗った、言わば出会いの日からもうすぐ一年になろうという頃で、花壇の一角に咲く桔梗の花を見つめながら、美沙紀はつぶやいた。
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