3 大震災

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 窓の先に目を凝らすと、黒い塊が(うごめ)き、盛り上がっていくのが見えた。  それが何かを察知し、身の危険を感じるのと、窓を突き破るのとが同時だった。そして津波に呑まれた。  美沙紀は、信じることができなかった。  一緒に歩んでいけると信じ込んでいた愛しいあの人が、そして、3つ年上で、たまに口げんかをしても、わがままを通す美沙紀をいつも最後には笑って(なだ)めてくれた優しい姉までもが、目の前からいなくなってしまうなんて。  美沙紀は、震災から3か月が経ち半年が過ぎと日を重ね、日々の生活が落ち着きつつあると感じるにつれて、貴史がなぜ自分を残して行ってしまったのかと、逆恨みにも似た思いにかられ、そんなふうに思ってしまう自分を責めた。  しかし悲しみは癒えることもなく、そんな心を慰めてくれる姉も、今はいない。
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