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それでも、日常を取り戻さなくてはと、心を奮い立たせて学校に行き、実家が流されて家族が未だに避難所生活をしているという友達の話に、大変だね、私は自宅が無事だったからまだよかったと友達を慰める。
でも、そうやって強がってみたものの、授業に出ても講師の声は耳を素通りし、美沙紀が握っていたペンは、文字の代わりにむすび丸の絵を描いていた。
むすび丸は、貴史のお気に入りのゆるキャラだった。
バッグに付けているそれ何? と聞くと、待ってましたとばかりに説明してくれた。
――大学の地域政策の講義のときに、ご当地キャラクターによるまちおこしが題材として採り上げられ、宮城の観光キャンペーンに一役買うむすび丸のことを調べたんだ。
そのむすび丸が最近アニメにもなって、この前テレビに映っているのを見たんだよ。
そうしたら、声も話し方も君によく似ていてびっくりしたんだ。
それで、毎日密かに可愛がってあげようと、こうしてバッグにくっつけて持ち歩いているんだ。
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