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2 出会い
野田美沙紀は、貴史と同じ高校に通う一年後輩で、ある日、以前電車の中で惹かれた女性に何となく似ている、と感じたのが始まりだった。
その後も朝の通学時に見かけ、彼女をこっそり視界に収められる位置取りを意識するようになった。
電車の扉の脇に立って、座席を隔てて一つ隣の扉付近に立つ彼女を遠目に眺めながら、「好きだ」と告白する自分を想像して思わずニヤつき、真向いに立つメガネの女性に、不審と軽蔑の入り混じった眼差しを思いきり浴びせられたこともあった。
そんなある日、思わぬ事態に遭遇した。
夏の暑さが残る、日差しの強い朝だった。
貴史が駅に着くと、いつも乗る電車が運行を見合わせていた。電気系統にトラブルが発生したとかで、発車の見通しが立たないという。
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