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♢♢♢
「奥さん、妊娠したんだってね。おめでとう」
「はい、安定期に入りまして」
「それはおめでたいね~」
「本当、本当。山崎君は絶対親バカになるだろうね」
「それはそうですね。絶対なると思います」
ちょうど上司に美世の妊娠を伝え、そのあと同じ部署のみんなにも同様に伝えた。
美世のお腹の中には今、女の子がいる。
きっと美世に似て可愛い女の子になるだろう。今から楽しみであり、いつか誰かの大切な人になるのかと思うと少しだけ寂しさがある。
「ただいま」
「おかえりなさい」
お腹の大きくなった美世が玄関を開ければ俺を迎えてくれる。
妊活は、すぐには出来なかったが俺が美世に触れることが出来る回数が増えていくと自然にそういう流れになった。
長年片思いをしていた好きな女性を抱く幸せ感は言葉に表せない。
「何ニヤニヤしてるの?」
「早く美世に会いたくて残業はできる限りしないようにしてるんだ」
「…そうなんだ」
夕食をテーブルに並べながら照れたように言った彼女に近づいた。
「わ、」
「美世って俺だけなんだよね。触れられても拒否反応でないの」
「そうだよ!びっくりだよね。結局怜君だけなんだよね。それもそれで困るんだけど…」
「困ることはないよ。俺だけでいいよ、君に触れるのは」
そう言って美世を後ろから抱きしめる。
大きくなったお腹を撫でながら“その他“も触ると
「もう…」
と呆れたような言葉を漏らす。そうは言いながらもまんざらでもなさそうな美世を再度優しく抱きしめる。
「ねぇ、思ったんだけど」
「うん?」
「私たちってやっぱり相性良いと思うの。あの遺伝子検査、してよかったなぁって心から思う。でもね、それって怜君の努力があったからなんだよね。相性がいくら良くても怜君があんなに私のことを思って行動してくれなかったら好きにならなかったかもしれないし、こんなふうに幸せな家庭を築けなかった。ありがとう」
「そんなことないよ。美世を好きだったから出来たことだしね」
「それが凄いんだよ。ありがとう、お父さんも喜んでるよ」
「そうだね」
お義父さんとお義母さんには安定期に入ってすぐに子供が出来たことを伝えた。
そうか、と言って泣きながら喜ぶ美世の両親を見て本当に良かったと思った。
お互いに不埒な理由で遺伝子検査を利用して結婚をしたが、彼女と縁を作ってくれたことに本当に感謝しているのだ。
ふと、リビングルームに飾られた俺たちの写真に目がいった。
それは、結婚式の写真だ。俺の腕に手を回す彼女をこれからも守っていきたいと心の底から思った。
END
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