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「遺伝子レベルだって。どう思う?」
「どうって…?」
「私は早速登録したんだけどさ、レベルがあってAだったのよ」
「A?」
派遣社員仲間の今野茉奈とちょうど今話題の政府主導で運営している婚活サイトについて話していた。
今年25歳になる堀井一華は自分で作ってきたお弁当を食べながら茉奈に聞き返した。
遺伝子検査によって行われる婚活サイトは今年から運営が開始され、既に登録者は2万人を超えたらしい。
遺伝子などの難しいことはわからない一華は甘い卵焼きを口に含みながらぼんやりと婚活について考えていた。
「そうだよ!まだやってないんだ?登録だけでもしてみたらいいよ。面白いよ」
「そうだね。そのうち登録だけでもやってみようかな」
「その方がいいよ。でも登録してもS以上の相性の人ってなかなかいないらしい。ほら、登録できるのって20歳以上の未婚でしょう?そうなると確かに限られてくるよねぇ、」
「なるほど…」
茉奈は口を尖らせてAって微妙だよねと不満そうに言った。
来週、茉奈は相性判定がAだった30代の男性と会うようだ。
これまで民間で行われていたAIを駆使した婚活サイトとは一線を画す。
本人たちの意思とは反して“遺伝子検査”のみで相性のいい相手がいればお知らせとして通知が来るという仕組みだ。
年収、外見、家柄などこれまで重要視されていた条件の提示は一切ない。
提出するのは頬の粘膜と身分証明書、マイナンバーカードのみだ。
それなのにも関らずここまで人気となると興味本位で登録をする人もいるのだろう。
それとも本気で相性のいい人を探したいのだろうか。
「一華も彼氏しばらくいないんでしょ?」
「…うん、そうなの。でも結婚なんて考えたこともないから」
「ま、女は結婚が幸せでもゴールでもない時代だからね」
「だよね」
そろそろ昼休みが終わりそうだと気が付き、急いで残りのご飯を掻き込むように口の中に入れる。
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