CASE1

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♢♢♢ 一か月後 一華は表参道の辺りをフラフラしていた。 この近くになるビルで今日、顔合わせをすることになっていた。 民間の婚活サイトよりも人気なのは“遺伝子”という聞きなれないワードに興味をそそられた以外にも政府が主導ということで身分の偽りなどのトラブルがないといったメリットがあるかららしい。 方向音痴の一華は緊張しながらもようやく目的のビルに到着した。 比較的新しいそのビルに恐る恐る足を踏み入れる。 季節はもう春だ。トレンチコートを脱ぎ、受付の女性に用件を伝えるとすぐに首にぶら下げるカードを貰い、エレベーターで指定された階へ移動した。 一華は何度も深呼吸をしながら、緊張を解こうと自分の両手を合わせる。 エレベーターを降りてすぐのドア入り口に“婚活案内パートナー”と書かれてある。 「初めまして。えっと…今日顔合わせの予定の、」 たどたどしい口調になったのはやはり緊張しているからだ。 担当者は女性ですぐに笑顔を向ける。 案内されたのは奥の個室だった。既に“相手”は来ているのだろうか。 一週間前に届いた通知書には“Sプラス”と書かれていた。 最初は何のことかと思ったが相性がSプラスという最上クラスの相手がいるというのだ。 多分結婚まではいかないだろうが一度会うくらいはいいと思ったのだ。 すぐに顔合わせの承諾をした。 そして今、一華はここにいる。 ソワソワしながら白を基調としたオフィス内で相手を待っているとノックする音が聞こえた。顔を上げると個室に入ってきたのは柔らかい雰囲気の男性だった。
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