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♢♢♢
「誰かが家にいると本当に心強いね」
ゴキブリの件があってから更に美世とは距離が縮まった。
(ゴキブリはあれ以来家には出ていない)
ちなみに手を握って寝ることは日課になった。寝ると言っても俺が寝落ちする直前まで手を握っているだけなのだが、それが今では俺たちの“普通”になっている。
もちろん彼女も了承済みだ。
朝起きると必ず「昨日も手を握ってくれた?」と聞く美世が可愛くて朝起きるのが楽しみになっている。
仕事も以前よりもやる気が漲り、会社へ向かう足は軽い。
家庭、妻を持つことがこれほどまでに俺の日常を変えるとは思わなかった。
彼女のために頑張りたいと自然に思うのだ。
“妊活”までは程遠い関係だが、俺自身もまだ“我慢”出来ているのは彼女を愛しているからに他ならない。
夕食も時間が合えば二人で作るし、買い物もできるだけ二人で行っている。
今日も二人で少し遠くまで散歩して買い物に行く予定だった。
が、美世にかかってきた電話が彼女の顔色を変え、今日の予定は全て変更になる。
「うん、わかった。すぐに行く」
「美世どうした?」
「お父さんが…急に体調が悪くなって。入院になったみたい」
スマートフォンを手にしたまま、泣きそうに顔を歪めた彼女は下唇を噛んで肩を震わせていた。
急いで二人で総合病院へ向かった。
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