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病院に向かう間も彼女はずっと願うように指を組み俯いていた。
総合病院の広い駐車場に係員の指示に従い車を停めると急いで病院内に入る。
美世も詳しいことはまだ聞いていないようだ。
消毒液の独特の匂いは昔自分の祖父が入院した際のお見舞いを思い出した。
子供ながらに大人の緊迫した雰囲気を感じ取り、ずっと落ち着かなかった。
子供には不安を与えないように大人は色々と隠すが大人が思う以上に子供は敏感なのだと思った。
「美世、大丈夫?」
「うん、平気だよ」
そうは言っているが、平気ではないことは明白だった。
個室の前で立ち止まる美世の手を握りそうになってやめた。
彼女が辛いときに、抱きしめられたらどんなにいいだろう。たとえ彼女が俺を好いていなくとも耐えられるが、彼女が泣きたいときに辛い時に抱きしめることが出来ないのはとても苦しい。
正面を向いて、ドアをノックすると彼女が先に病室に入った。
「お父さん、」
「あぁ、二人とも来てくれたのか」
「お久しぶりです」
「あら、二人とも。わざわざありがとうね」
個室の病室には点滴をしているお義父さんとその傍に腰かけているお義母さんの姿があった。
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