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お義父さんが体を起こして嬉しそうに目を細める。その笑い方はどこか美世に似ていた。
血のつながりのない親子のはずなのに、似ている。
美世は気丈に振舞っていた。先ほどの今にも折れそうな彼女はここにはいない。
「もう!心配したんだよ。でも元気そうだね」
「ははは、大丈夫だよ。お父さんはこんなことじゃ死なない。ちょっと体調が悪くて検査入院するだけだから」
「そうだ、美世。お父さんリンゴジュース飲みたいらしいの。下の売店で買ってきてくれない?」
そう言ってお義母さんは美世にお金を手渡した。美世はわかったと言って病室を出ていく。
俺が行こうか?と言おうとしたがやめた。理由は簡単だ。
お義父さんの目が何かを訴えるように俺をじっと見つめていたからだ。
美世が病室を出ていってからすぐにお義父さんが「今日はすまなかったね」と言った。
俺に何か話があるのだと悟った。それは出来れば美世に訊かれたくない話なのだろう。
お義母さんがパイプ椅子を用意してくれたから腰かけた。
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