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ーーー吾輩は、かつてこの世を恐怖に突き落とす魔王だった。
だが吾輩は生まれ変わった。
「ああ、ついに。復活なさった」
ゲボクーよ。お前には感謝せねばならない。
この世に生きる物全てに、この暖かな気持ちを届ける事が、吾輩の新たな使命。お前から学んだ事だ。
「いいえ。私はただのうさぎです。魔王様、これからどうするのですか?」
西へ行く。それに、吾輩はもう魔王ではない。
「では、何とお呼びしたら?」
吾輩の名は、
ビリケンだ。
「その名前は使えません!」
え? ダメなの?
「既存の名前なので。少し重たいですが、西の町までお連れしましょう。きっと、誰かの役に立つかもしれません」
意味深だな。
「魔王よ! 討ち取りに来たぞ!」
何でこのタイミングで勇者!
ちょっと待て!
色々状況が変わったから! 1回待て! な?!
「魔王よ! 我々は勇者と共にこの地に平和をもたらしに来たのだ!」
あ、あんた勇者じゃないんだ。そっか勇者寡黙だもんね。あっちでもじもじしてる奴だろ? てか魔王じゃないんだよ吾輩! 聞いて! 生まれ変わったの!
「魔王よ! どこにおるのだ?!」
ここにいるよ! 目の前だよ!
「うーん、どこにもいない。留守と見せかけて我々を騙し討ちする気か?」
騙してない騙してない!
今さっき神様になったの! 正確には何か神様的な暖かみのある何かに。
「勇者様、野うさぎの足元にこんな物が落ちていました」
あれ?
「勇者様、これはとても暖かい。今時期には丁度いい」
あ、これあれだ。俺、あれだ。
カイロだ! 俺はカイロだ!
神じゃない、暖かいカイロだ!
「……暖かい」
勇者喋った。あーもう、……使ってくれ。
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