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復活の魔王
吾輩の名は「魔王」。この世に混沌と破壊をもたらす者。
はるか昔に勇者に討たれ数千年、地上の下僕がようやく復活の儀を執り行うという。
この体が地に降り立てば、再びこの世に影を落としてやろうぞ。
ーーー「魔王様、魔王様聞こえますか? 私です。ゲボクーです」
その声は、忠実なる下僕、ゲボクーの声か?! どこにおる!? 姿を見せろ!
「ここにおります。魔王様の棺の目の前に」
吾輩には野うさぎしか見えぬぞ?
「はい、私です」
は?
「私がゲボクーです」
うさぎに化けておるのか?
「いえ、野うさぎに生まれ変わったのです」
ゲボクーよ。たわけた事を抜かすでない。魔王の忠実なる下僕がそんな小さな野うさぎに生まれ変わる訳がない。
「貴方様をお守りする為に、勇者に立ちはだかったのが前世の最後の記憶。倒れた私は気が付けば……てんとう虫になっていました」
は?
「だから、最初はてんとう虫だったんです」
最初? え? 何? 2回目なの? 復活して2回目なの?
「最初はてんとう虫になって、天寿を全うしました。風の流れと共に羽根を羽ばたかせ、森を駆ける心地よさといったら、他には例えようがありません」
てんとう虫になった感想なんて聞いてねぇよ。魔王を差し置いて、お前何で2回も復活してんの? ずるくない?
「てんとう虫としての天寿はほんの数分だったのです」
あー、……時間制なの?
「いえ、運悪く蜘蛛の糸に掛かり、捕食されました」
壮絶な最期だったな。まぁ、吾輩の下僕に相応しい幕切れよ。それで、野うさぎになったんだな。
「それが、私は気が付けば森に住む木こりの子として生まれていたのです」
3回目じゃーーーん!! すぐ復活してる!
スパン短くね?! てんとう虫から木こりの子まで期間短くね?!
「スクスクと私は育ちました」
いらねーよその情報。いいから吾輩をさっさと復活させろよ。
「大事な事なんです魔王様。最後までお聞きください」
何で下僕に説教じみた注意を受けないといけねぇんだよ。立場変わってねーか?
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