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コーヒーを二杯淹れて、男性の分はソーサーにミルクとシュガーを添えた。凌也はコーヒーをテーブルに置くとL字型のソファの短い方に座る。男性が名刺を出した。GWLレンタル、加山稔とある。凌也も名刺を渡してA4の封筒から書類を四枚出した。一枚は故意にアンドロイドを破損した場合、弁償金を支払ってもらうと書いてある。凌也はすべての書類にサインをして印鑑を押した。
「それでは今から玲香のレンタルを開始します。充電は八時間で切れるので必ず高速充電機を使って充電をしてください」
加山は深くお辞儀をして玄関を出た。玲香は凌也とお見送りしていたが加山がいなくなると窺うように上目遣いで凌也を見た。
「松本凌也さん、なんとお呼びすればいいのですか?」
「凌也でいいよ。僕は玲香って呼んでいいのかな?」
「はい、凌也。私、料理も掃除もなんでもできます。体が凝っていたらマッサージもできます」
「いや、玲香をお手伝いやマッサージ師代わりに頼んだわけじゃないよ。一晩だけ僕の彼女になってもらいたいんだ」
玲香は首を小さく振ってため息をついた。
「私に生殖器はついていません」
凌也は誤解を招く言い方をしたかなと思った。改めて言い直す。
「玲香が危惧しているようなことはしない。ドライブしてイルミネーションを観たいんだ。このマンションはベッドが一つしかないのでシティホテルのスイートルームに泊まりたい。もちろん触れたりなんかしないよ」
身体を固くしていた玲香の表情が緩んだ。凌也はほっとした。
「まあ、ソファで待っていてよ。僕は着替えて車をレンタルして来るから。寂しいだろうから音楽でもかけようか? 洋楽は好き?」
「はい。昔の洋楽も。今、流行っているものも」
「それは良かった。一時間くらいで帰るからね」
凌也は寝室へ行ってクローゼットの中からピンクのシャツにコーデュロイのパンツに着替えた。ピーコートを羽織ると皮のスニーカーを履いてマンションを出た。車のレンタカー屋はここから歩いて五分の駅の近くにある。玲香が乗っていて疲れないような高級車を借りるつもりだ。
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