秘密はUSBで

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 予約したのは一泊十万円もする高級ホテルのスイートルームだ。凌也はシティホテルには何度か泊まったことがあるが仕事での使用だったのでスイートルームは初めてだ。カードキーを渡され部屋のドアを開けると高そうなソファのセットが置かれており大きな窓からは夜景が一望できた。東京タワーがライトアップされている。凌也はスリッパに履き替え、玲香のスリッパを揃えて置いた。玲香は驚いている表情で中に入り窓際に立った。凌也は窓に向かって左の引き戸を開けた。十二畳ほどの寝室があってベッドが二つ並んでいた。この部屋にも大きな窓があって夜景がよく見えた。  凌也はソファに腰掛けると、玲香にも座るように促した。 「充電はまだあるかな?」 「はい。三時間はあります」 「じゃあ、お喋りに付き合ってもらいたい」  内線に電話してフランス産の赤ワインのルームサービスを頼んだ。自分でも買ったのだがホテルのワインの方が値段も張って美味しそうだったからだ。失恋パーティーは豪勢にいきたい。  ワインの味が分かるほど飲みなれていないがホテルのワインは芳醇で上品な味がした。凌也はワイングラスをテーブルに置いて今日行ったイルミネーションパークについて語る。 「春や夏はフラワーパークらしいが、僕は花に疎くてね。小学生が解る花の名前くらいしか解らない。その点イルミネーションはいいな。頭を使わずに視覚に響く」 「私、花の名前はすべて解るようにできています。イルミネーションも綺麗でしたけど、園内は藤が綺麗だと案内がありました。凌也、彼女ができたら連れて行けばいいんじゃないですか?」 「彼女か。当分の間は作る気はない」
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