ロンリネス

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 先に言っておこう。  私は孤独だ。  父母はすでに他界、友達といえるほど仲の良い知り合い、並びに彼氏無し。  故に孤独、孤独なのだ。  だがしかし、それが原因で生活が滞ることもなく、「まあいいか」と高をくくっていたのだが。  滞ったのだ、今。  私は小説家を目指している。  バイトしながら小説を、書いて書いて…。  もちろん、生活は楽ではないが、「夢のためならへっちゃらだ!」と色々な賞に自分の小説を送りまくって早十二年と三ヶ月十日。もう何度目かわからない、「私はだめなんじゃないか、才能がないんじゃないか」「諦めよう」という脳内会議を繰り広げていたとき、つまりはネガティブ最高潮のとき、その知らせは届いた。    「あなたは、柊小説新人賞に選ばれました。」  そして今に至る。  完璧に滞った。孤独だからこその滞り方をした。  自分の喜びを分かち会えない事がこんなにも辛いなんて。  通常ならここで、「エ!えりちゃんやっと賞とれたの!?おめでとぉ〜」だとか、「えりえり〜(泣)よかったね〜〜(泣)」だとか、自分のことのように、自分のことのように!喜んでくれそうな知り合いにすぐさま報告する、というイベントが待っているはず、なのだが。  私は孤独である。  そのようなイベントはおろか、「おめでとう」の一言すらもらえるか怪しいのだ。  こんなに嬉しいのに!今までの人生で一番嬉しいことが今、私の身に起こっているのに!!  ちなみに、「えり」というのは私の本名だ。  本名白石絵里、ペンネーム大塚まりえ  世の中には考えても解決しない問題があるのだと知った。  私は、静かに布団の中に潜り込んだ。  そして、人生で一番嬉しいはずの出来事を一生懸命に忘れようとする。  嗚呼、私が何をしたというのか。    消灯  時刻は9時30分。  大人、というくくりに位置する彼女、白石絵里が寝るには早すぎる時間に、真っ暗な部屋の中でスマホが振動する。  メッセージを受信した合図だ。  それは、もちろん友人からのおめでとうなぞが綴られているものではなく、単なる事務的なものである。    彼女は孤独、孤独なのだ。            
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