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夜。
ほの暗い森の中に呪文を唱える声だけが響いていた。
優しく包み込むような声だ。
声の大きさはそれほど大きくはない。
にも関わらず、声は森の隅々まで広がっていく。
声の主はゴードン司祭だった。
ゴードン司祭は儀式を開始していた。
現世に未練を残して死んだ霊魂を黄泉へと導く鎮魂の儀式だ。
そこに骸骨たちが集まってきていた。
死の受け入れを拒絶している骸骨たちは、ゴードン司祭の儀式の邪魔をしようとする。
だが周囲に施された結界によって魔方陣の中に入る事ができない。
見えない壁に阻まれた。
それでも骸骨たちは儀式を辞めさせるため魔方陣の中に入ろうとする。
何度も何度も見えない壁に弾かれるも諦めない。
強引に結界を破ろうと群がる。
さすがに数が多かった。
結界がミシミシと軋む音を立て始める。
結界が破られるのは時間の問題かと思われた。
だがそこに声がかかった。
「いい加減にしろ! お前らはもう死んでるんだよ!」
ベルモアが骸骨たちの前に立ちふさがった。
問答無用で目の前の一体を切り捨てる。
深い思考はできず、本能だけで動いている骸骨たちは、ベルモアのことを敵と認識して一斉にベルモアに向かっていった。
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