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2.
氷に閉じ込められていたセトは、よみがえった後も記憶が失われていた。
そんな彼が巨大兵士ゴンデムの記憶を取り戻したと同時に起こしたのが聖者オッペケの頭部破壊事件であった。
街の中央には、セント・ピタゴラ大聖堂を中心にさまざまな教会関係の施設が集まっている。この施設のひとつに、氷からよみがえった青年が呼びつけられたのは、彼が起こした事件が原因であった。
「困ったものですね・・・
偉大なる聖者オッペケの像を破壊したとなれば、相応の罪に問われなければなりません」
「す、すみません、、
バカさゆえの過ちというか、なんというか・・・」
「しかし、身元もわからないとあっては裁判の進めようもない」
行き詰った議論の現場に呼び出されたのは教会の情報管理官ギバスだ。裁判や教会の意思決定にかかわる事実関係を明らかにするのが彼の仕事である。
「記憶を呼び戻す魔法ならお任せください」
薄暗い部屋の一角に小さな机と椅子がおかれている。
ここに座らされた身元不明の青年は机のコップに注がれた白湯を一口飲んで、静かに目を閉じた。
「ボクの名前はセト」
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