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「早くここを出ないと、生き残っている魔王の部下が来ちまう」
バツの悪い表情を浮かべるガイア。
無念そうに唇を噛むが、どこか顔を作っているようにも思える。
さっき撮影した写真を根拠に、自分が魔王を倒したと報告するつもりなのかもしれない。
アルが致命傷を与え、私がとどめをさしたのに。
「復活の薬、持ってないんですか」
ローザの返事はつれなかった。
「『クロッカスの祈り』のこと? 持ってきてないわ。高価だし、爺さんが復活の魔法を使えると言ってたから」
視線を向けたダノン爺さんは、何度も酒瓶を傾け顔を赤らめていた。
「そうやったかのう。忘れてしもた」
「思い出してください! なんのために、そのお酒あげたんですか」
「う、ううむ……」
物忘れが激しい60歳過ぎのダノン爺さんは、お酒を飲むと高度な白魔法を繰り出す頼もしい白魔道士へと変わる。
ただ、仕事で得た報酬もその日のうちに酒代に消えるほどの酒豪で、今手にしている酒瓶も、最後の戦いに向けて私が用意したものだった。
うなだれる私の傍にガイアがしゃがみ込む。
「残念だけど、アルのことは仕方がない」
「そんな」
ここまで力を合わせてやってきたパーティーだったのに、目標を達成したらそこで終わりってことなの?
あんまりだ。
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