あれ

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 あれの話をしようと思う。  え? あれって何かって?  バカ言っちゃいけない。あれといえばあれに決まってる。  え? ヒント? なんのこったい? あれでわかんないんじゃヒントなんか無駄だろう。なになに、そう言わず教えてくれ? しょうがないね。  よしわかった、じゃあこうしよう。あんたの方からあれがどんなものか質問をしてみなさい。そしたら私が質問に答えてあげますから。  よし、なんでも聞いてみなさい。  え? 形? 形ねえ。そうさなあ、形は、丸い  ……といえば丸いようでもあるし三角といえば三角、四角といえば四角のようないやそのどれとも違うような。  色? 色はね、赤だね。と思うと次の瞬間には青、そしてまた次の瞬間には緑、紫、黄色と、常にその色を変え続け、果ては斑や縞模様……  生きてるものか? そうさね、まあ生きているといやあ生きているんだろうが、普通に生きてるという状態とはちいっとばかり違うような気がするし、そもそもそういう概念を当てはめること自体正しいのかどうか……  え? テキトー言ってるだろって? 何をいうんだい。そんじゃあ何かい、私が嘘ついてあんたをだまくらかそうとしてるとでも言うつもりかい?  不愉快だね。不愉快ですよ私は。そんなことまで言われてわざわざ教えてやる義理はないね。とっとと帰んな。帰っておくれ。ほら、帰った帰った!  ……行ったね。やっと行ったよ。本当に全く。  楽じゃないよ。あれの相手するのもさ。
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