12人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「ありがとうございましたー」
パン屋から出てきたクレアは、空を見上げた。
鮮やかな青が目に染みて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
(結局、あの骨董店って、何だったんだろう)
『さよなら骨董店』。
どこにあったのかも分からない。
まるで、用意された幻。役目を終えたら消えてしまう、ファンタジー。
「まぁ、いっか」
クレアは歩き出すも、すぐに足を止めた。
道端にはハルジオンが咲き誇っていた。
(思えば、花を見る余裕もない数ヶ月だった)
これから自分がどう生きていくのかは、クレアにだって分からない。
朝になったら起きて、パンを食べ、工場で働いて。
夜になったら眠りにつく。
そして時々思い出す。
全部持って行かれては、いないから。
(せっかくだから花屋さんにも寄って帰ろう)
そうやって、日々を過ごして、いくのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!