失くした結婚指輪

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*** 「ありがとうございましたー」  パン屋から出てきたクレアは、空を見上げた。  鮮やかな青が目に染みて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。 (結局、あの骨董店って、何だったんだろう)  『さよなら骨董店』。  どこにあったのかも分からない。  まるで、用意された幻。役目を終えたら消えてしまう、ファンタジー。 「まぁ、いっか」  クレアは歩き出すも、すぐに足を止めた。  道端にはハルジオンが咲き誇っていた。 (思えば、花を見る余裕もない数ヶ月だった)   これから自分がどう生きていくのかは、クレアにだって分からない。  朝になったら起きて、パンを食べ、工場で働いて。  夜になったら眠りにつく。  そして時々思い出す。  。 (せっかくだから花屋さんにも寄って帰ろう)  そうやって、日々を過ごして、いくのだろう。      
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