想い破れて連れ立って

　私の恋が終わった。あまりに突然に。密かに想いを寄せていた先生が先日結婚した。報告を聞いたクラスメイトたちは口々に祝福の言葉を送っている。

「先生、おめでとう！」
「相手の人どんな人？」
「赤ちゃん産まれたら写真見せてー」

　授業が終わった後も先生はクラスメイトたちに囲まれている。先生の笑顔。左手の薬指に光る銀色の指輪。視界に入れただけで私の胸は締めつけられる。わかっていたはずだ。この恋が叶わないことぐらい。なのに。どうしてこんなにも苦しいのだろう。その場にいるのが耐え切れなくなった私は、カバンを持って教室を飛び出した。

　とにかくここじゃないどこかへ行きたい。校門を抜けてからはその一心で私は走り続けた。行く当てなんてどこにもない。とにかくあの場から離れたかった。こうして走っていれば忘れられるかな。

　先生とはじめて出会った日。はじめて話した日。運動会で一緒に写真を撮った日。勉強を教えてもらった日。全部全部。

　この頭の中から消せたらいいのに。そしたらこの涙も止まるのに。