微睡に揺れる

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微睡に揺れる

いつだったか、幼馴染みと交わした約束。その時の光景が映し出される。 ガラガラと音を立てて回る映写機が放つそれのように古ぼけた映像を私は観ていた。 しかし、夢というわけでもなさそうで、朧々さは一切感じない。むしろ、意識はずっと鮮明な気すらした。 手、指、つま先、関節にもしっかり感覚はある。ただ、それを動かすことができない。身体中が酷く重たくなっている。意識はこんなにもはっきりしているのに、目蓋を開けるだけのわずかな力すら入らない。 どうしてこんな状態になっているんだろう。今のこの身体より幾らも働く頭を巡らせても、思い当たる節はない。どれだけこうしているか分からないけれど、最後に何をしていたのかがすっぽりと抜け落ちてしまっている。 多分ここは病院……のベッドの上。それにしては妙な静寂に満たされているような気がする。考えたところでそれを確かめる術のない私の意識は、やがて再び微睡みへと落ちていった。
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