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サンプルの一覧からラインストーンを選んでいたカオリが、徐に「そういえばさぁ」と零す。
「場所は違うけど、アンタん家来るのってアレ以来だよね。クマの…何だっけ?」
ああ、言われてみれば。私は手元を見たまま答える。
「クマコね。テディベアのクマコちゃん」
「そうそう、あの呪いのぬいぐるみ!」
「もー、そんな風に言わないでよー」
レース模様のシートがズレそうになって、ピンセットを持ち直す。
カオリは不満げに口を尖らせているけど、思い出話が楽しいのか嬉しそうだ。
「なに言ってんの、アンタ超ビビってたじゃん。"かおちゃん助けてぇ~"って電話してきたの覚えてっからね!」
おどけた素振りで変えた声色がちょっと似ていて、余計に恥ずかしくなった。
「だって、あの時は不安で怖かったんだもん」
今度こそ綺麗にシートを貼り、平静を装って配置のバランスを確かめる。澄ましていないと、またからかわれそうだから。
これから先も、こうして会ったら度々笑って話すんだろう。
可愛くて、不思議で、少し怖い、あのテディベアのことを。
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