ぬいぐるみ奇譚~クマコのハナシ~

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 ひとつ深呼吸をして、発信をタップしようとした時、着信にスマホが震えた。  まだ慣れない大きな画面には、今まさに、かけようとしていた名前。 『も…もしもし…?』  カオリに背中を叩かれ慌てて電話に出たら、声が上擦った。  電話越しの彼もまた、緊張して引っくり返った声をしていた。  そして、挨拶も何もなしに開口一番。  ≪やっぱり好きだ≫と、そう言った。  あまりの急展開に頭がショートしそうになって、思わず 『わ…っ、私も!』  なんて、何も考えずに返してしまって、電話特有のちょっとした沈黙に気まずさを感じる間もなく、どちらからともなく笑い出して、1年も喋っていなかったのが嘘みたいに私たちは自然に話をした。  元気にしてた?とか、そんな程度の会話がびっくりするほど嬉しくて、付き合っていた頃に一瞬でタイムスリップしたみたいだった。
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