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『待って待って!なんで!?』
『いいから水!水!』
私もカオリも大慌てで、すぐそこのキッチンにドタバタと走って、手当たり次第にコップやボウルに水を入れた。
でも、それを持って振り向いた時には既に、クマコはほとんど原型を留めないほど燃えてしまっていて、数歩の距離を駆けて戻った私たちの前で、手品のように消えてなくなった。
焚き火の業火の中すら平然としていたクマコが、真っ赤な炎を纏って燃える姿もさることながら、その跡にリボンの切れ端すら残っていないことにも驚いた。しかも、それだけでなく、クマコを座らせていた長い毛足のラグは、一切燃えていなかった。お焚き上げに出した時のクマコのように、焦げのひとつもない。
テーブルから落下したアロマキャンドルも、気が付いた時には、最初からそう置かれていたみたいに床に着地していて、私の部屋からクマコだけが消えてしまったのだった。
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