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水を張った容器を持ったまま、呆然と顔を見合わせる私たちの耳に、微かな声が聞こえるようになったのは数秒後。
放り出してベッドに落ちたスマホから、電話越しの彼が呼び掛ける声だった。
左手のグラスをスマホに持ち替え、右手にマグカップを握ったまま、開いて塞がらない口で応える。
『クマコが…燃えちゃった…』
狭いワンルームに残されたのは、魂が抜けたように呆気に取られて話す私と、心配そうに慌てる彼の声を届ける電話。
そして、感心したみたいに腕組みをして笑うカオリ。通話する私の前で、彼女が零した言葉をよく覚えている。
『…燃え尽き症候群、ってやつ?』
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