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「今考えても変な話だよねー、ぬいぐるみが燃えないなんてさ」
完成したネイルを窓から差し込む日光に翳して、カオリは眺める目を細めた。
「あのまま、燃えないでくれたら良かったのに」
魔法でもかけられたように、何も残らずに消えてしまったクマコを思い浮かべて呟くと、
「アンタたちが無事にヨリ戻して、思い残すことがなくなったんでしょ。そんだけ心残りだったってことよ」
と、あの頃より大人びた横顔が諭した。
「…そうだね」
ジェルの瓶をケースに並べ、ゆっくりと蓋を閉める。蓋の隅に貼ったテディベアのシールは、クマコに似ていたので思わず買った代物だ。
あれ以降、何となくお守りのようなつもりで、テディベアの柄や小物に目が行くようになった。細々と始めた、このサロンの看板や、お店のSNSのアイコンにもクマのイラストを使っている。カオリがクマコの話をし始めたのも、ドアに提げたプレートを見たからかもしれない。
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