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「あれから、もう8年かぁ。早いよねー」
「言い方が年取ってるぞー、ミヤちゃーん」
小物の片付けを終え、紅茶のおかわりを注いだカップを差し出すと、仄かに立つ湯気の向こうに八重歯が見えた。
「っていうか、もう“ミヤ”じゃないしね、アンタも」
にやにやと茶化す気満々の笑みに、釣られて笑ってしまう。
「もー、だからミヤのままでいいってば」
「遠慮しなくていいのよ?ん?」
「遠慮じゃないから!」
“ミヤ”という呼び名は、高校時代、私の名字・“三宅”を略してカオリがつけたニックネームだ。元から彼女しか使わなかったけれど、可愛くて気に入っているから、そのまま呼んでもらっている。
私の名字は、6年前に“熊田“になったのだ。
「クマちゃんって呼んであげよーか?クマコちゃんがいい?」
「クマコはクマコだけだし!」
私が結婚してから、カオリはこの名前イジリがお気に入りのようで、会ったり電話したりする度に話を振ってくる。
そういえば、高校時代は彼も“クマちゃん”とか呼ばれていたっけ。
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