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ひとしきり笑ってから、「ま、何にしてもさ」と落ち着いた声。
「新居で一家3人、仲良くやってんなら何よりよ」
そう言って、カップから立ち上る湯気に、フーフーと息を吹きかける。猫舌の彼女が飲めるようになるには、時間がかかりそうだ。
それを察したのか、カオリは自力で冷ますのをやめて、カップをテーブルに置いた。
「そういえば、今日は娘ちゃんは?」
ネイルを始めた時と同様に周りを見回す所作に、熱々の紅茶を飲んでから答える。
「お隣さん家。同じ幼稚園の子がいてね、よく遊びに行くの」
「仕事してても安心ってワケね」
「うん、すっごい助かってる。お客さんとして来てくれたりもして」
スマホの待ち受けにしている娘の写真を見せると、子ども好きの彼女の顔が如実に綻んだ。
「年少さんだっけ。かっわいいねー」
「そう、ママ似なの」
得意気に言う私に、「旦那寄りじゃないのは認めよう」と、ようやく冷めた紅茶を一口。
このやり取りも、もう数回目だ。娘の写真を見せた時の恒例になりつつある。
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