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話し込んで入園式や七五三の写真を見せているうち、ふと気付いたようにラベンダーの爪が画面を指差した。
「なんか、2人の写真多くない?旦那は?」
「んー…仕事忙しいみたいで」
私と娘の写る平面から、対面する私へ視線を移して、少し冷静になった声が訊く。
「…大丈夫?何かあった?」
ちょっとドキリとして目を伏せると、画面はもう黒くなっていた。
結婚して、去年この家を建ててから、確かに彼の帰りは遅くなった。けど、ローンもあるし、30歳の節目もあって仕事の内容も変わってきたんだろうと納得していた。たぶん、希望も込みで。
「実は、しばらくちゃんと話してないんだよねー…。彼が帰ってくる頃には娘と一緒に寝ちゃってたり、休みも合わなかったりして…」
湯気の立たなくなったカップの縁から唇を離した顔は、一転してやや強張っている。笑った時の八重歯と同じく、真面目な時の眉間の浅いシワも健在だった。
ちょっと険しい目つきが、ネイル瓶のケースに貼られたテディベアのシールを見る。
「不完全燃焼はやめなよ?今回は、さ」
私がそっと頷いたのとほとんど同時に、ドアのベルが鳴った。
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