ぬいぐるみ奇譚~クマコのハナシ~

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 家の1階、角部屋のサロンには、外から直接出入りできる方と家の中に繋がる方、2つのドアがあり、お客さん用のドアには喫茶店のようなベルをつけている。  音に釣られて振り向くと、そこには娘が立っていた。 「ただいまーっ」  出がけに持たせた鞄を背負って、満面の笑みを見せる娘に、私は驚いた。視界の端でカオリも動きを止めているのがわかる。  何にびっくりしたかと言えば、予定より1時間早く帰宅したことでも、遊びに行く時に必ず使うお気に入りのトートバッグを、持ち手に腕を通してリュックのようにしていることでもない。 「あのねっ、これねっ、おうちのまえにいたの!」  にこにこしながら駆け寄ってくる愛娘が、見覚えのあるテディベアを両手で抱きかかえていたことだ。  小さな手に抱いた、自分の体と2回りほどしか変わらないぬいぐるみを、絶句する私に差し出して、無邪気な笑みが声を弾ませる。 「どこからきたのかなぁ?ゆきちゃんも、ゆきちゃんのママもしらないんだって。リボンつけてるから、きっと、だれかのだよね…。おめめケガしてるから、ママ、みてあげて?」
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