0人が本棚に入れています
本棚に追加
家の1階、角部屋のサロンには、外から直接出入りできる方と家の中に繋がる方、2つのドアがあり、お客さん用のドアには喫茶店のようなベルをつけている。
音に釣られて振り向くと、そこには娘が立っていた。
「ただいまーっ」
出がけに持たせた鞄を背負って、満面の笑みを見せる娘に、私は驚いた。視界の端でカオリも動きを止めているのがわかる。
何にびっくりしたかと言えば、予定より1時間早く帰宅したことでも、遊びに行く時に必ず使うお気に入りのトートバッグを、持ち手に腕を通してリュックのようにしていることでもない。
「あのねっ、これねっ、おうちのまえにいたの!」
にこにこしながら駆け寄ってくる愛娘が、見覚えのあるテディベアを両手で抱きかかえていたことだ。
小さな手に抱いた、自分の体と2回りほどしか変わらないぬいぐるみを、絶句する私に差し出して、無邪気な笑みが声を弾ませる。
「どこからきたのかなぁ?ゆきちゃんも、ゆきちゃんのママもしらないんだって。リボンつけてるから、きっと、だれかのだよね…。おめめケガしてるから、ママ、みてあげて?」
最初のコメントを投稿しよう!