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『キレイに燃え残った、と』
はなをすすりながら事情を話すと、カオリは毛の1本すら焦げていないクマの背中を疑わしそうに見つめた。持ち帰ってはきたものの、どうしたらいいかわからず壁を向かせて部屋の隅っこに置いたら、それはそれで後ろ姿が意味深になってしまった。
『お祓いもしたのに…何回やってもダメで……うぅ……っ』
『めちゃくちゃ燃やしたいのね』
ぬいぐるみへの視線が哀れみに変わったのを感じ、私は居たたまれなくなって部屋着の膝を抱えた。
『だって…見たら思い出しちゃうんだもん…』
『未練の塊ってわけか』
『ハッキリ言わないでー…』
その部屋着も、彼とお揃いのものだった。遠距離になって始めの頃に出かけた先で買ったけれど、勿体なくて着られなかったのを別れてから見つけて、引っ張り出したのだ。物に罪はない、と自分に言い聞かせて。
カオリは『なるほどねぇ』と溜息混じりに呟いて、少し黙ってから、
『不完全燃焼なんじゃないの?ミヤも、このクマもさ』
と、親指でクマを指し示した。
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