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5.ハプニング
その時、レイラが叫んだ!
「アリス!気を付けて!上から雪の塊が落ちてくるよ!」
レイラの未来予知で何らかの危険が迫っていることがわかったようだった。
見るとゲレンデの遥か上の方に何かが落ちてきているような雪煙が上がっているのが見えた。アリスはあれが雪の塊だとしても、集団でいるクラスメートの中に突っ込んだら、大変なことになると思った。
先生はすぐにポケットの中からホイッスルを取り出し、
「ピーピピピピピ!」
と思い切り吹いたが、距離があったからか聞こえていないみたいだ。
雪玉は約50mまで近づいている。大きさは直径約50cmというところか…。あまり大きくはないが、速度は速い。人に当たれば大怪我をしそうだった。
アリスはこれしかないと考え、二人乗りのソリを背中におぶり、亀の甲羅のようにして、雪玉が落ちてくるコースに背中を斜面の上に向けて横になった。
先生とレイラが同時に、
「キャーーーーーーーー!!!」
と叫んだのがクラスメートにも聞こえたようだ。すぐにインストラクターの指示で子ども達はコース脇に寄せられていた。
直後アリスの背中に、「ガッ!」という音を立てて雪玉は直撃し、そしていくつもの破片に割れて散り散りになった。
アリスは元いた場所から下に2mほど押されて転がり、ソリは真っ二つに割れていた。
「アリスー!」
と叫びながらレイラは先生の背中から飛び降りて、雪の上を四つん這いで泣きながらアリスに駆け寄る。その後ろを先生もレイラと同じようになぜか四つん這いで続いた。
その直後、ムクリっとアリスが上体を起こし、レイラ達を見て、
「レイラと先生は雪の中を這っていったい何してんの?」
と言った。
レイラは、
「バカァ~、アリスのバカァ~」
と言って泣きながらアリスに抱きついた。先生も同じように抱きつき、
「アリスちゃ~ん…」
と言って泣き出した…。
後でインストラクターから聞いた話によると、スキーヤーがリフトで上まで行った時に、ふざけて小さい雪玉をゲレンデに放り投げ、それが徐々に大きくなりながら下まで転がって来たのではないかということだった。
アリスは念のため近くの病院に行って検査をしたが、どこにも異常はなかった。
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