春色ブレンドと優しい時間

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朝陽は時々手を止め宙を仰ぎ、その匂いに酔いしれてる。 削る音が変わってゆくタイミングで、トレイを押しコーヒーを淹れる準備に取り掛かった。手を動かしながら「しばらくお付き合いください」とコーヒーの説明をしてゆく。 「Café Fleuri オリジナル 春色ブレンドは、コロンビア ブラジル ブルーマウンテンと………」 彼が初めて僕に春色ブレンドを淹れてくれた日、僕の人生は変わったような気がした。コーヒーを淹れるというゆったりと優しい時間が僕の心の枷を外してくれ、朝陽は僕に感情を吐き出せば心が楽になることを教えてくれた。 これまでいろんなことがあったけど、辛いことも幸せなことも 今は全て僕の心の糧となり精神を豊かにしているような気がする。 「Café Fleuri と出会えてよかった。あなたに会えて本当に良かった」 「今更…何を感心してるんだ?」 「あの日、朝陽が淹れてくれた春色ブレンドを今度は僕があなたに淹れてる……なんだか、感慨深くて改めてそう思ったんです」 「そう?嬉しいよ」 朝陽が恥ずかしそうに微笑んでいる。 粉に湯が馴染むと、ポットを上下し泡立ててゆく。香りに包まれると僕まで口元が緩んでいった。
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