春色ブレンドと優しい時間

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朝陽は、コーヒーを口に含んだまま舌で転がすようにテイスティングしている。目を閉じたままの彼、神経を全集中させているようだった。 「ん。美味しい。芳醇なコクとフルーティーな香り…ブルーマウンテンを多くしたんだな」 「はい。出来が凄く良いって朝陽が教えてくれたから、割合を多くしてみたんです」 「災害で復興は絶望的だった。こんな短期間でナンバーワンの称号がもらえるとは思わなかったよ。農園のみんなの努力の結果だ……」 「ナンバーワン?」 「そうだ」 朝陽は、水分の含有率や欠豆の含有量などから豆がランク付けされることを話してくれた。その希少でもある称号が貰えたときの農園のスタッフの喜びは半端なかったらしい。 その当時の苦労と称号を貰えた際の喜びを興奮気に話している朝陽を見ると羨ましく思えてくる。 僕も朝陽と一緒に喜びを分かち合いたい。よく出来たとぎゅっと抱きしめ褒めて欲しい。 「……その皆の努力をこんな美味しいコーヒーにしてくれて、うれしいよ。響……」 コーヒーカップをソーサーの上に置く音がすると朝陽から腕を掴まれ引き寄せられた。 「あさ…ひ?」 すぐ目の前に恋焦がれた朝陽の顔が見える。 彼の顔はゆっくりと傾けられ……キスされた。
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