224人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ…ちょっと、動かないで。響…」
博人は、カップケーキにパクつくとサラサラと揺れる前髪に手を伸ばしてきた。距離が縮まると思わず歩を下げる。
「粉がついてる……」
「えっ、どこ。どこ??」
ちゃんと鏡は見たはずなのにと思いながら、おたおたしながら髪を触った。「違う違う」と言われると、博人のがっしりとした指が髪に触れる。
「ここだよ」
「あ……」
どきんと心臓が跳ねた。こめかみに彼の小指が当たると温かさが伝わってくる。僕より10センチ高い博人を呆けたように見上げると彼は目尻を下げ、ふっと微笑んだ。
「ドキッとした?」
「なっ!冗談だったの?」
「ついてたのは、ホント」
博人は笑いながら僕の頭をくしゃと撫でた。「響ってさ、驚かせるとモカの目に似てるから、からかいたくなる」そう言って毛先をつまみ指でくるくると絡めてゆく。
「もう…からかわないでよ」
ドキドキで、心臓が弾けそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!