秘めた初恋

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「あ…ちょっと、動かないで。響…」 博人は、カップケーキにパクつくとサラサラと揺れる前髪に手を伸ばしてきた。距離が縮まると思わず歩を下げる。 「粉がついてる……」 「えっ、どこ。どこ??」 ちゃんと鏡は見たはずなのにと思いながら、おたおたしながら髪を触った。「違う違う」と言われると、博人のがっしりとした指が髪に触れる。 「ここだよ」 「あ……」 どきんと心臓が跳ねた。こめかみに彼の小指が当たると温かさが伝わってくる。僕より10センチ高い博人を呆けたように見上げると彼は目尻を下げ、ふっと微笑んだ。 「ドキッとした?」 「なっ!冗談だったの?」 「ついてたのは、ホント」 博人は笑いながら僕の頭をくしゃと撫でた。「響ってさ、驚かせるとモカの目に似てるから、からかいたくなる」そう言って毛先をつまみ指でくるくると絡めてゆく。 「もう…からかわないでよ」 ドキドキで、心臓が弾けそうだ。
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