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3 王子さまはごちそう?(王子さまのぼうけん)
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小さな王子さまの巻き起こす騒動がどんな感じなのかが分かる、とあるできごとをお話しましょう。
ある日のことでした。冥王さまの狩猟の旅に、王子さまもついていくことになりました。
魔獣がたくさん暮らしている野原で、狩猟大会が催されるのです。
冥王さまは今回も、王宮から選りすぐりの魔族の騎士たちをつれて行きます。
それ以外にも、冥界のほうぼうから有力な魔族の氏長たちが呼び集められて、楽しい狩り大会が開かれました。
狩猟大会の開かれるところは、冥界の中でもとりわけ景色のよい場所です。河が流れ、岩山があり、いろいろな植物が生えていました。そこは魔獣界と呼ばれる、地底にひろがる平原でした。
広い野原に、冥王さまのための本陣が設えられました。
獣のなめし皮でつくられた野営用の天幕が設置され、薪ストーブが焚かれ、王さまが狩りの様子を見学できるよう、天幕の一部は野原に向けて開け放たれていました。
中央の指揮卓には地形図が広げられ、りっぱな鎖かたびらを着た騎士たちが次々に出入りして、冥王さまと何か打ち合わせをしています。
王子さまはまだ小さく狩りには参加できないので、おとなしく椅子にすわって足をブラブラさせていました。けれどもだんだんとその場所にいるのに飽きてきました。だって、小動物ですら草むらを自由に跳ねまわっているのに、自分だけは「天幕から出てはいけない」と言われていたからです。せっかく久しぶりに冥王宮のお外に出たのに、ずっと天幕の中で見学なんて、つまらなすぎます。
王子さまのご機嫌をとろうと、死の精霊たちがふわふわ目の前で踊りましたが、それらがフワフワ浮遊しているのはいつものことですし、たいした慰めにはなりません。王子さまは天幕のお外で遊びたかったのです。
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