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王子さまは、まだ三百歳をいくらか超えたぐらいでしょうか。
人間の頃合いに当てはめると、ちょうど六歳から七歳の間ぐらいです。
まだとても幼い子どもです。
王子さまは澄み渡った濃青色の瞳をもち、流れるような黒髪はこのころはまだ短くて、襟にやっとかかるぐらい。白い頬はマシュマロのように柔らかくすべすべで、かぼちゃのような黒の短ズボンとタイツを履き、上着は装飾だらけでぴかぴかでした。
上着の上から青いベルベットの片袖マントをお召しになり、小さな冠をかぶると、その格好は王子さまの上品なお顔立ちにぴったりでした。精霊たちを従え、いさましく錫杖をついた立ち姿などは、ご立派なのになんだかまだ可愛らしすぎて、周囲が思わずうぷぷ、と吹き出してしまうほどでした。
ただ、王子さまは遊びたい盛りなので、一日中そんな重たい衣装を着ていることはまずありません。たいてい途中で上着やローブは羽虫の抜けがらのように、王宮の廊下にぽつぽつと落ちていました。
それを拾うのはたいてい乳母か、乳母の夫か、侍女たちか衛士か、ときにはお父さまのときもありました。
みんな、そのやんちゃな遊びぶりにため息をつくばかりですが、それでも王子さまの巻き起こす小さな騒動は日々、周囲の心を和ませるものなのでした。
王子さまは、存在するだけで周りの癒しとなり、皆にその成長を喜ばれているのです。
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