2 この国ができたころのこと

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2 この国ができたころのこと

 王子さまの住む地底の死者の国は、今は「冥界」と呼ばれ、冥王さまが治めています。  では、どうやっていまのような冥界ができたのか、少しだけその成り立ちのお話をしましょう。  ……かつて、世界がまだ生まれたてだったころ、その死者の国には、いまのように冥王さまはいらっしゃいませんでした。神さまの治める国ではなかったのです。  先住民の魔族たちは、集落ごとに分かれてお互いの土地をうばい合っていて、地下の世界は荒れ放題でした。  ……はじまりの時代、三界をお作りになった創世神さまは、  天上界には自分の子である神々と精霊たちを  地界には人間と動物たちを、  冥界には魔族と魔獣たちを、住まわせました。  でも、そこまでやってから、創世神さまは別の次元の世界を作るのに夢中になってしまわれたので、この三界は作りかけの不完全のまま始まりました。  冥界が混沌としている、という神族たちからの訴えに、創世神さまは 「神々のだれかひとりを下界に遣わせて、おさめなさい」 と言い残して去りました。きっと今もどこかで、別の世界を創造しておられるのでしょう。  冥界を平らかにするために、天上界の神さまたちは毎日毎晩、話し合いをしました。  そしてひとりの神さまを、地底世界に送り込むことにしました。  それが闇の神さま、つまり王子さまのお父さまです。
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