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闇の神さまは、天界でひとりだけ黒髪で赤い眼をしておられため、ほかの金髪碧眼の神々に、たいそう醜いと思われていました。
見た目が異なるうえに、闇の神さまは精霊を扱う力も持たないようだったので、できそこないの神だと馬鹿にされていたのです。
闇の神さまはいつもひとりで自信なさげに、昼間は物陰にかくれていました。
なにせ天上界の昼の明るさは彼にとっては毒にひとしく、光を浴びすぎると白い肌が荒れて、ひどい痘痕になります。
その顔をみんなにさらに笑われたり、また怖がられたりするのがつらくて、いつもなるべく天王宮の、光の差さない奥部屋に閉じこもって暮らしていました。動けるスペースはごく限られていて、外を歩くのも月あかりのない新月の夜だけ。一年でとても限られた日数だけでした。
そんな闇の神さまを、ほかの神さまたちは、適任だと言って地底に送り込むことに決めました。
じめじめした地底の争いごとを納めさせるにはぴったりだ、と言って。
「そんな決め方では、彼がかわいそうだわ!」と異議をとなえたのは、ひとりの女神だけだったと言われています。
けれども闇の神さまは、自分が天界に不要な存在であることは確かだと思っていたので、悲しいけれどこの取り決めを呑み、神族みんなに別れを告げて、地底の国に自ら降りていったのでした。
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