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さて、地底の国では、主立った魔族たちが領土を主張しあい、たいへんな争いが起きていました。
お互いを落とし穴に落とすために、たくさんの穴ぼこを掘り(だから今でも冥界は地面が穴ぼこだらけなんです)、窟門と呼ばれる風穴をふさいで往き来を邪魔したり、時には魔獣をけしかけて集落を襲わせたりと、やりたい放題に、戦いにあけくれていました。
そこに突然、得体のしれない神さまが送り込まれてきたのです。
魔族たちは、よく分からないよそ者に対抗するため、ひとまず休戦しました。
突然あらわれたその若者は、大変つややかな長い黒髪に、すばらしい血の色の瞳をもっていました。
魔族たちからすると、そのお姿は、一目で心奪われるほどに美しいものでした。
天上の同族たちには忌み嫌われていたのに、地底ではそのお姿を絶賛されたのです。所変われば、美しさの基準もちがうのです。
また、天から来たらしいその若者は、地底じゅうの闇の精霊と死の精霊を一瞬で配下とするほどの、とてつもないなぞの力をもっていました。
闇の精霊たちと死の精霊たちは大集合し、喜びの歌を歌いました。「冥界の王が降臨された! われらの主神が現れた!」と口々に叫んで、その出現をお祝いしました。
魔族たちは、まだにわかには信じられず、しばらくは遠巻きにその強そうな若者を観察しておりました。かれが『太古の魔獣なみの化けもの』であることは明らかでしたが、魔族の敵なのか味方なのか、よく分からなかったのです。
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