公爵令嬢・オブ・ジ・デッド

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◇  緩やかな流れにふわりと意識を取り戻す。  ひたすらに暗く冷たい。真っ暗な川を流れ漂う、そんな妙に寂しく落ち着くような心持ち。黄泉の国、か。  ……私は死んだのだな。直前の記憶を思い出す。  ギロチンの衝撃はなかった。拍子抜けするほどあっけなく視界がバウンドして意識を失った、気がする。  18年の人生が思い浮かぶ。走馬灯というものは死ぬ前に流れるものではなかったのかな。そう思うと妙におかしくなってきた。  私は公爵令嬢として生まれ、生まれる前からフリードリヒ王子の婚約者だった。だから幼少の、それも赤ん坊の折から王子と縁があった。フリードリヒ王子は温厚で他人に影響されやすい。そこをあの女、シャーロットに付け込まれたのだろう。あるいは何らかの魔法や薬などが用いられたのかも知れない。  全てがおかしくなったのは私と王子が学園に通い始めた3年前。  学園は貴族と優れた才能を持つ平民の子女のみが入学を許される。  同学年で入学したシャーロットは男爵令嬢にも拘らず王子のまわりをうろつき始めた。随分はしたないと思いはしたが、それでどうなるというわけでもない。  しかしシャーロットの周囲は不審だった。  この学園は学問はもちろん、それぞれ立場に応じた振る舞いを学ぶのも目的の1つ。  私は公爵家、王家の剣として危険を排除するためそれら不審人物の調査を命じた。思えば王が病を患ったのもちょうどその頃だ。
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