第四章 妻の暴走

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「助かった」  唯は言いながら、玄関を抜けて、自室に入ると、ベッドに腰かけた。 「僕はそれくらいしかできませんから。なにがあったのか、聞かせてもらいますからね?」  にこりと笑みを浮かべた伊織だが、目が据わっている。床にちょこんと座った。 「包丁片手に暴れる妻をなんとかしてほしいと、依頼を受けた」  唯は思わず溜息を吐いた。 「離婚ですむ話じゃないんですか?」  伊織が首をかしげた。 「それでは駄目なんだと」  唯は苦笑しながら言った。 「どうして怪我をしたんです?」 「散々暴れまわった光景を目にして、こいつにはなにを言っても聞かんと思った。無傷で終わらせることもできなくはなかった。だが、それをオレはよしとしない。依頼をこなすには、代償がいる。どうしても必要なものだ」 「だからって、怪我をしなくてもいいじゃないですか」  伊織は頬を膨らませて言った。 「そういうわけにはいかん。それに、オレは無敵じゃあない」 「無敵な人なんて、この世界にはいませんよ」  伊織は苦笑しながら言った。
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