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「助かった」
唯は言いながら、玄関を抜けて、自室に入ると、ベッドに腰かけた。
「僕はそれくらいしかできませんから。なにがあったのか、聞かせてもらいますからね?」
にこりと笑みを浮かべた伊織だが、目が据わっている。床にちょこんと座った。
「包丁片手に暴れる妻をなんとかしてほしいと、依頼を受けた」
唯は思わず溜息を吐いた。
「離婚ですむ話じゃないんですか?」
伊織が首をかしげた。
「それでは駄目なんだと」
唯は苦笑しながら言った。
「どうして怪我をしたんです?」
「散々暴れまわった光景を目にして、こいつにはなにを言っても聞かんと思った。無傷で終わらせることもできなくはなかった。だが、それをオレはよしとしない。依頼をこなすには、代償がいる。どうしても必要なものだ」
「だからって、怪我をしなくてもいいじゃないですか」
伊織は頬を膨らませて言った。
「そういうわけにはいかん。それに、オレは無敵じゃあない」
「無敵な人なんて、この世界にはいませんよ」
伊織は苦笑しながら言った。
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