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頭を切り替えて、紀知祥平の住む家に向かった。表札を見て、目の色を銀色に変えつつ、ドアを蹴破った。が、誰も出てこない。首をかしげつつ、土足で上がり込み、一階を見て回った。親はいないのかもしれない。二階へ上がると、突き当たりの部屋から、一人の少年が出てきた。
「さっきの大きな物音、もしかして、あんたがやった?」
「そうだが?」
唯は冷ややかな声で返した。
「なにをしにきたの?」
「紀知祥平に用があってな」
「それならぼくだけれど、用事ってなに?」
「貴様に絶望を届けにきた」
恐ろしいほど冷たい笑みを目にした少年は、いったん部屋へ戻った。待っていると、カッターを手にしていた。
「なにをしたって言うんだ!」
「自分の心に問いかけてみろよ。自分の異常性に気づかない、馬鹿ではあるまい?」
笑みを崩さず、唯が言った。
「なにを言っているのか、さっぱり分からない!」
少年は怯えを隠すように、声を張った。
「貴様は、自分の異変にも気づけないのか。そうか、気づいていないとはなぁ。くくっ」
唯は低い声で言い、嗤った。
「なにがおかしい!」
声が震えてしまい、少年は顔を歪めた。
「依存しているというのは、自分では分からないものなのか、なぁ?」
唯の嘲笑いが続く。
「なんの話をしているんだ!」
「止めだ。貴様には直接分からせてやる」
唯は笑みをかき消して、低い声で言いながら刀を抜いた。
艶やかな黒い刀身があらわれる。
「黙って殺されるわけにはいかない! そんなの認めない!」
そう言い放った少年だったが、カッターを握る手が、ガタガタと震えている。
「殺しはしない。だが、貴様には地獄を与えてやるよ」
唯は言いながら、刀を構えて突っ込んだ。
少年は襲ってくるであろう痛みから逃れるために、カッターを突き出した。
それはたまたまだが、唯の腹を刺していた。
不敵な笑みを崩さないままの唯は、少年の左腕を切断した。
「あああああっ! 痛い痛い痛いっ!」
悲鳴と同時に、二度と動かない左腕が床に落ちた。
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