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伊織は身を固くしたが、その言葉を聞いて思わず、引き締まった身体に片腕を回した。泣きながら額を胸に押しつけた。
「そうか、そんなにも哀しいのか。俺はここにいる。……伊織」
唯は低い声で名を呼んだ。
「唯さん……! 僕は、あなたのことが、好きですっ!」
しゃっくりをしながら伊織が言った。
「オレの穢れ切ったこの心を、伊織は、受け容れてくれるのか……?」
低く、優しい声で、唯は尋ねた。
「……拒む理由なんて、ないです。それに、中途半端な気持ちで、告白したんじゃないです!」
伊織は泣きながら言った。
「それは、分かっている。落ち着くまで、こうしているから」
唯は伊織の背中を擦った。
伊織は唯に抱きしめられたまま、泣き続けた。
それから三時間が経ち、伊織は唯の腕の中で、寝息を立て始めた。泣き疲れてしまったのだろう。
唯はそっと伊織を抱き上げて、ベッドに寝かせた。泣きすぎて頬に痕が残っている。
そんな伊織の頬をつっと撫でた唯は、いったんベッドから離れて、ワイシャツを羽織った。
眠っている伊織を眺めながら思った。
――まさか告白されるとは。嫌いではなかったが。そんなにも想ってくれていたことには感謝しかない。せめて、夢の中では、安らかであれ。
その願いも込めて、唯は伊織の右頬に口づけを落とした。
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